いくつになっても、甲子園に主張している高校球児達が、年上に感じてしまうヨミトです。
夏の暑さのピークもオリンピックととも、「また次回会いましょう」と終焉してほしい今日この頃。
名古屋市の河村たかし市長が、東京五輪ソフトボール日本代表・後藤希友選手の金メダルを無断でかじった問題が、大きな波紋をよんでいます。
後藤選手が2021年8月4日、表敬訪問した際、河村市長は突然マスクを外し、後藤選手に断りもなく金メダルを口に入れ、歯をあてて噛むポーズをとりました。
市長には、すごくジューシーなメダルに見えたんでしょうか。
これを受け、柔道の高藤直寿選手やフェシング元日本代表の太田雄貴さんらが河村市長の振る舞いを「選手に対するリスペクトが欠けている」などと批判しています。
さらに後藤選手が所属するトヨタは「残念に思う」と、河村市長に反省を求めました。
強い批判を受け、河村市長は5日、「ご本人様の長年の努力の結晶である金メダルを汚す行為に及んだ」などと謝罪しました。
しかし、批判はやまず、6日に予定されていた名古屋市と名古屋グランパスエイトとの包括協定の締結式が中止となってしまいました。
SNSには「まじでキモい」などと河村市長を強く非難するものから、「器物損壊では?」と法的問題を問う声も上がっています。
果たして、河村市長の行為は、法的問題にも発展する可能性はあるのだろうんでしょうか。
目次
1.刑事上の責任
2.民事上の責任
3.雑感
1.刑事上の責任
まず、実際に立件されるかどうかは別にして、理論的には確かに器物損壊罪(刑法261条)の成否が問題となります。
河村市長が金メダルをかじったことにより金メダルに歯形などの傷がついてしまった場合には、物質的に金メダルの形体を変更・滅失させたといえ、器物損壊罪(刑法261条)が成立します。
市長の顎の力がハイエナ並じゃなくて良かった・・・と言いたいところですが、実は、物理的に壊さなくても、器物損壊罪が成立する可能性があります。
器物損壊罪の「損壊」は、器物を物質的に変更、滅失させる場合だけではなく、事実上もしくは感情上、物の本来の効用を害すること、いわゆる物の効用を喪失させる行為も含むとされています。
例えば、洋服を例にとると、他人の洋服に泥をかけたりした場合、一応洗濯すれば、服として着用することはできますが、シミが残って、着用して外出することができなくなったら、壊れたりはしてないけど、もうそれは実質的には着れないよねってことですね。
裁判例では荷札をとりはずす行為(最高裁昭和32年4月4日判決)、他人の飲食器に放尿する行為(大審院明治42年4月16日判決)、自動車のフェンダーなどに人糞を塗りつける行為(東京高裁平成12年8月30日判決)などがこれに該当するとされています。
今回のケースで、河村市長は金メダルを口でかじり唾液等を付着させていますが、過去の裁判例の放尿や人糞などと比べれば、感情上物の本来の効用を害する程度は明らかに低いと思われます。
でもそれは、比較対象がかなりレベル高いですよね。
唾液だって、嫌ですよ。
我慢できる唾液ってかなり限定されますよね。
それに、新型コロナウィルスが蔓延している状態下で他人の唾液等を付着させる行為はウィルスの飛沫感染などの恐れもあるため慎重に判断されなければなりません。
参考判例として先ほどあげた東京高裁平成12年8月30日判決は、人糞を塗りつけた行為について、その量が極めてわずかで、容易に除去できる態様であるなど特段の事情があれば器物損壊罪は成立しないと判示しています。
今回のケースは人糞や尿ではなく唾液であること、市長は新型コロナウィルスに感染していないと思われること、その量も極めてわずかで消毒して拭けば容易に除去できる態様であること等を考慮すれば、器物損壊罪は成立しないと判断される可能性はあると思います。
ただし、刑法上、器物損壊罪は成立しないとしても他人の金メダルを断りもなくかじるような真似は、常識を疑ってしまいますよね。
リスペクトしている相手であったら絶対にしない行為といえますね。
また新型コロナウィルス感染対策上も控えたほうがよいでしょう。
日頃おこなわれている除菌、消毒作業の意味・・・。
市長がとった行動は、色んな面からみても、問題が潜んでいるってことですね。
2.民事上の責任
市長が金メダルをかじった行為について不法行為責任(民法709条)が成立するかが問題となります。
金メダルに歯形などの傷をつけた場合には不法行為責任に基づく損害賠償責任が発生します。
これに対し、金メダルに何ら傷がつかなかった場合であっても、選手の承諾なく勝手に金メダルをかじるという行為自体が選手に対するリスペクトを欠く行為であり、選手に精神的苦痛を与えたものと評価される余地はあると思います。
私物に勝手に嚙みつかれるって考えると、かなり不快ですね。
そのような場合には不法行為責任に基づく損害賠償責任(慰謝料)が認められる可能性も否定できません。
現時点で法的な問題をとる動きは見えていませんが、河村市長の行動には法的な問題になる可能性はあります。
金メダルに傷がついた場合、刑事面では器物損壊罪が成立し、民事面で不法行為に基づく損害賠償責任が発生します。
また、金メダルに何ら傷がついていない場合でも、刑事面では器物損壊罪が成立しない可能性が高いものの、民事面では金メダルをかじるという行為により選手に精神的苦痛を与えたものとして不法行為責任に基づく損害賠償責任(慰謝料)を負う可能性は残されていると思います。
3.雑感
市長はテンション上がっちゃったのかなー、と思いますよね。
それに、後藤選手と自分の関係性を見て、自分の方が立場が上っていう認識が少なからずあったんじゃないでしょうか。
年齢は確かに、大分離れてるでしょうからね。
多分、目上や対等の立場という認識なら、絶対に無断ではなやらない行為でしょうし、年下だから、軽率な行動にでてしまったのではないかと感じてしまいます。
自分も日頃、こんな感じで、下の人間と無意識で思っている人に対して、リスペクトを欠いた行動をしていないか、思い返してしまいます。
あまり恐縮しすぎず、それでいてリスペクトを欠かない、そんな人間関係が理想ですかねー。