最近は、ネット上での誹謗中傷が多いですよね。
やっぱり、ネット上にスマホやPCで書き込むことと、リアルに相手と対面して発言することとでは、ネット上での書き込みの方が、心理的に大分気楽なんですよね。
これは大多数の人間に当てはまると思います。
ネガティブな言葉や攻撃的な言葉って、なかなか相手の目を見ながら発言できないです、通常は。
それに慣れている人も一部にはいます。
相手に自分の顔面が見られていない状態で攻撃するってのは、隣のビルの屋上から政界の大物を仕留めるゴルゴ13のような感じですね。
ゴルゴ13は、暗殺者なので、自分の正体がばれてはいけないという、理由があります。
仕事がなくなって、フリーターになってしまいますからね。
元暗殺者が、コンビニのバイトするのは、ハードル高いんです。
ネット上での誹謗中傷をする人たちは、自分の正体がばれてはいけないから、本当は面と向かって言ってやりたいのに、泣く泣くネット上で発言をしている、なんてことはないですよね。
自分の正体がバレない(実際は、突き止めることが可能ですが)というシステムの下、気持ちが大きくなってしまうんでしょうね。
それで、誹謗中傷をして、相手の心を傷つけてしまう。
でもね、ちゃんと、自分の書き込みを見る「人間」がいるってこと理解して、ネット上で発言する人もいるんです。
結局は、想像力の問題だと思うんです。
PCやスマホの画面で完結していると思う人は、向こう側に人間がいることを想像してほしいですね。
【目次】
1.侮辱罪の厳罰化
2.侮辱罪の厳罰化は、自由な発言を封じ込めてしまうか
3.雑感
1.侮辱罪の厳罰化
そんなこんなで、ネットでの誹謗中傷は、大きな社会問題となっています。
ネットでの誹謗中傷を抑制する対策として挙げられた方法は、侮辱罪の厳罰化です。
ネット上に関わらず、他人の悪口を言った場合、侮辱罪や名誉棄損罪が成立する可能性があります。
ここで、侮辱罪と名誉棄損罪の違いって何なのか、ってことになるのですが、ものすごく簡単に言うと、発言の内容が抽象的か具体的かって感じです。
例えば、「●●はバカだ」とか「●●はブスだ」という発言だと、侮辱罪の成立が問題となりますし、「政治家の●●って奴は、▲▲会社から賄賂を受け取っている」とか「●●さんは、同僚の▲▲という人と不倫している」という発言だと、名誉棄損罪が問題となります。
ネット上の誹謗中傷の内容が抽象的に、特定の人を侮辱する発言である場合は、侮辱罪の成立が問題になるわけですが、では、なぜ侮辱罪の厳罰化だけ話題になるのか。
それは、侮辱罪は、名誉棄損罪と比較すると、刑が軽いんですね。
現状、「名誉棄損罪」の刑罰が「3年以下の懲役もしくは禁固又は50万円以下の罰金」であるのに対し、「侮辱罪」の刑罰は、「拘留又は科料」となっています。
「拘留」とは、1日以上30日未満の間、刑事施設に拘置することです。
「科料」とは、1000円以上1万円未満の金額の納付を命じることです。
なので、仮に、ネット上で、特定の人を、抽象的な言葉で侮辱するような誹謗中傷をした結果、その人が自殺してしまった場合、侮辱罪が成立したとしても、1万円未満のお金を払うか、30日未満の間、拘束されれば、刑罰は終わりになってしまいます。
前科はつきますけど。
人の死という重大な結果を招く危険性があるような行為であるのに、刑罰が軽すぎないか、ってのが、今回の問題提起ですね。
そこで、上川陽子法相は9月16日、社会問題となっているネット上での誹謗中傷対策として、侮辱罪に懲役刑を導入する刑法改正を法制審議会に諮問しました。
今回の諮問は、現行の侮辱罪に「1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金」を追加する内容となっています。
ネットでは歓迎する意見が多いようですがが、その一方で「批判と中傷の線引きが曖昧で、言論が萎縮してしまわないか」「権力者が批判を封じ込めるためにも使えてしまわないか」など懸念する声もあるようです。
2.侮辱罪の厳罰化は、自由な発言を封じ込めてしまうか
侮辱罪や名誉棄損罪のような、発言を罰する犯罪については、表現(言論)の自由との調整が、問題となります。
憲法は、原則として、国民に表現の自由や、言論の自由を保障しています。
つまり、何か発言した際に、その発言の内容次第で、不利益な扱いをしてはいけないってことですね。
ただ、当然のことですが、この表現の自由や言論の自由も、無制約ではありません。
他人の権利を不当に侵害してはいけません。
なので、表現の自由や言論の自由に一定の制約を課すこともできますが、これがなかなか難儀な問題を生むのです。
例えば、本来、政治批判は、より良い政治の模索という点では、歓迎されるべきではありますが、批判をされて、それを受け入れることができる政治家だけではありません。
気分を害する人もいるでしょう。
そこで、その批判を、「侮辱だ」とか、「名誉棄損だ」とか言って、封じ込める可能性が出てきてしまうのです。
このように、意見を言ったら、罰せられる可能性があると思うと、自由に自分の意見を発信することができなくなってしまいます。
そして、「発言しないことは賛成とみなす」みたいな運用になってしまいかねません。
発言する際、常に処罰される可能性を考慮しなければならないとしたら、ネット上で自由な議論は成立しなくなるでしょう。
判例上も、侮辱の成否については、いまだ明確な線引きはされていない状況のようなので、侮辱罪が厳罰化されることによって、自由な発言が阻害される可能性もゼロではないんです。
罰せられるべき誹謗中傷的な発言と、尊重されるべき意見の発信の区別について、どのような基準を確立していくか、この問題の議論の場として、ネットが活用されればいいなと思います。
3.雑感
多くの人から、誹謗中傷を受けることって、一般人はなかなかないじゃないかなぁとは思いつつ、他方で、中学生、高校生とか、逆に、まだ触れるコミュニティーが狭いので、小数の人間から誹謗中傷されたとしても、狭いコミュニティーでの割合は大きくなって、精神的にダメージを負ってしまうことってあると思うんですよね。
逆に、大学生とか社会人になると、いろんな種類のコミュニティーや、人間と触れることになるので、一部のコミュニティーで誹謗中傷されても、別のコミュニティーに移れば、誹謗中傷されたことも気にならなくなる、という逃げ道があるので、まだいいか、と思っていたのですが、なかなかそうでもないみたいですね。
人間って、メンタルがやられてる時は、ホントに世界が狭く見えてしまうんですよね。
今いる現状の継続しか、自分の生きる道はないんだ、みたいな。
ホントは、現状から逃げても、他に沢山の道があるのに、それが分からなくなってしまうんですね。
中学生、高校生、そして大人になってからも、つらい現状から逃げ出すような場所や方法が提供できればいいな、と思います。
「辛いならやめていい」「逃げていい」って言ってくれる人がそばにいるって大事ですね。
不幸になってまで、我慢しなくちゃいけないことってないですからね。