人見知り司法試験合格者 読解くん(ヨミトくん)のアウトプット

東京の46歳の弁護士が、業務上横領の疑いで、2021年6月26日まで逮捕された、という報道が流れました。

法律の知識もあり、裁判では被告人を弁護する立場にある弁護士が、罪を犯かした疑いがある、という報道は、世間に衝撃を与えます。

ところで、横領という犯罪は、よく耳にするけど、実際は一体どういう犯罪なのか?なぜ弁護士は依頼者のお金を横領したのか?逮捕された場合、弁護士資格はどうなるのか?といった点に疑問が湧くかと思います。

そこで、今回は、業務上横領、弁護士の預り金、弁護士資格について、読み解いていきます。


【目次】
1 業務上横領罪とは

 ⑴ 刑法253条「業務上横領」の規定

 ⑵ 「業務上自己の占有する他人の物を横領した者」とは

 ⑶ 業務上横領の刑罰

2 弁護士の「預り金口座」

3 弁護士資格と逮捕

 ⑴ 逮捕は資格剥奪には直結しない

 ⑵ 「禁固以上の刑に処せられた者」

 ⑶ 懲戒処分

4 雑感

 

1 業務上横領罪とは

 ⑴ 刑法253条「業務上横領」の規定

 業務上横領罪は、刑法253条に規定があります。

 そこでは、「業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、十年以下の懲役に処する。」と規定されています。

 法律の条文って、分かりにくかったり、読みにくかったりしますよね。誰が読んでも、一義的に理解できるように、誤解が生じないように、という趣旨だとは思うんですが、専門家じゃないと読解するのに苦労する条文とか結構あります。

 そういう時は、文章を分解すると、整理されて読みやすくなることがあります。

⑵ 「業務上自己の占有する他人の物を横領した者」とは

  「業務上自己の占有する他人の物を横領した者」は、「業務上自己の占有する他人の物を」と「横領した者」に、とりあえず分解することができます。

「業務上自己の占有する他人の物」とは、言い換えると、「業務上、他人の物を占有している」となりますね。

そうすると、「業務上、他人の物を占有している」ってのは、仕事の業務内容に他人の物を預かることが含まれていて、実際に他人の物を預かっている(占有している)となりますね。

その預かっている物が「業務上自己の占有する他人の物」となるわけです。

「横領」とは、預かっている他人の物を、勝手に自分の物として利用したり、処分したりすることです。

そうすると、「業務上自己の占有する他人の物を横領」ってのは、仕事の業務で預かっていた他人の物を、勝手に利用したり、処分したりすること、ということになります。

例えば、会社のお金を勝手に浪費して業務上横領罪が成立するってのは、業務に基づいて預かっている会社のお金を、会社の許可を得ず、自分のために消費したってことですね。

 ⑶ 業務上横領の刑罰

刑罰は「十年以下の懲役」なので、最高で10年間の懲役になります。

具体的には、いくら横領したかの被害総額や、何人のお金を横領したかの被害者数などが考慮されて決定されるでしょうね。

2 弁護士の「預り金口座」

 弁護士は、依頼者の代理人として、争いの相手方との間でお金のやり取りをしたりします。

 例えば、痴漢の被害者の代理人となった場合に、犯人が、示談金を支払うと言ってきた場合、その示談金は、被害者の口座に直接振り込まれるのではなく、一旦、代理人である弁護士の預り金口座へと振り込まれます。

そして、弁護士は、預かった示談金から、報酬を差し引いた額を、依頼者に渡す、ということをしたりします。

 このように、弁護士は、他人のお金を預かる、ということを頻繁に行います。

 頻繫に他人のお金を預かっていると、自分のお金と区別がつかなくなる可能性があるので、弁護士は、自分の口座とは別に、預り金口座という口座を作成しなければなりません。

 この預り金口座は、名義が、たとえば「弁護士●●(名前)預り金口座」となっていたりますが、この口座には、自分のお金を入れてはいけません。最終的に依頼者へ渡すお金や、依頼者のために使用するお金(実費等)が入金されることになります。

 つまり、この口座に入っているものは、弁護士が管理していますが、他人のお金、ということで「業務上自己の占有する他人の物」にあたるわけですね。

 なので、この預り金口座に入っているお金を勝手に競馬に使ったら、業務上横領罪が成立するわけです。

3 弁護士資格と逮捕

 ⑴ 逮捕は資格剥奪には直結しない

 結論から言うと、弁護士は逮捕されたということだけでは、資格は剥奪されません。

 弁護士法7条に、弁護士の欠格事由が規定されています。

次に掲げる者は、第四条、第五条及び前条の規定にかかわらず、弁護士となる資格を有しない。

  1. 禁錮以上の刑に処せられた者
  2. 弾劾裁判所の罷免の裁判を受けた者
  3. 懲戒の処分により、弁護士若しくは外国法事務弁護士であつて除名され、弁理士であつて業務を禁止され、公認会計士であつて登録を抹消され、税理士であつて業務を禁止され、又は公務員であつて免職され、その処分を受けた日から三年を経過しない者
  4. 成年被後見人又は被保佐人
  5. 破産者であつて復権を得ない者

 ⑵ 「禁固以上の刑に処せられた者」

そこには、「禁固以上の刑に処せられた者」と定められています。

 つまり、逮捕だけではなく、裁判で有罪の判決がでて、その刑が禁固以上であれば、弁護士は資格をはく奪されることになりますね。

 ちなみに、執行猶予という制度がありますが、これは、有罪であり刑が科されること自体は変わりないのですが、その刑の執行を一定期間猶予するよ、という制度です。執行猶予がついたからといって無罪となるわけではありませんが、その猶予期間を問題なく満了すれば、刑の言い渡しの効力は失われます。

つまり有罪ではありますが、刑罰をうけることはなくなります。これは刑法27条に規定があります。

 今回の事件でも、もし執行猶予がつけられて、猶予期間を満了できれば、弁護士として返り咲くことが、制度上は可能ということになります。

⑶ 懲戒処分

  弁護士は、弁護士法や弁護士職務基本規程に違反した場合は、所属弁護士会から懲戒処分を受けることがあります。

  この懲戒処分には、レベルがあって、戒告(注意)で済むものもあれば、除名(弁護士の身分を失い3年間が弁護士活動ができない)と重い処分もあります。

弁護士法57条1項

  1. 戒告(弁護士に反省を求め、戒める処分です)
  2. 2年以内の業務停止(弁護士業務を行うことを禁止する処分です)
  3. 退会命令(弁護士たる身分を失い、弁護士としての活動はできなくなりますが、弁護士となる資格は失いません)
  4. 除名(弁護士たる身分を失い、弁護士としての活動ができなくなるだけでなく、3年間は弁護士となる資格も失います)

  所属する弁護士会の判断によりますが、業務上横領罪で有罪となれば、重い処分が下される可能性も十分にあります。

4 雑感

  弁護士の預り金に関するシステムって改善の余地はないのかな。

  人の金を勝手に使うことはもちろん許されない行為だけど、「人間は弱い生き物である」という、ある意味、性悪説に立ったうえで、システムを、横領が現実的に困難なものにすれば、心の弱い人間が犯罪に手を染めることもなくなるのでは。

  ちゃんと真面目に借金を返していくことにつながるのではと。

  なんてことを考えています。


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